
大分弁で「とても」と言おうとすると、
意外といろんな言い方が出てきます。
たとえば、
- しんけん
- もな
- えれえ
- ばされえ
- とうてん
- ざーねー
- いちべえ
- そうとう
など。
でも面白いのは、これらが全部きれいに
標準語の「とても」一語に置き換わるわけではない こと。
「すごく」に近いものもあれば、
「かなり」「ものすごく」「そんなに」「とてもじゃない」に近いものもある。
今回は、コメントで出てきた言い方をもとに、
大分弁で“強さ”を表す言い方の語彙集 として整理してみます。
1)「しんけん」:いちばん広く使いやすい“大分のとても”
まず最初に出てくるのが、やっぱり しんけん。
使い方
- とても
- すごく
- 本当に
- 真剣に
文脈によって意味が少し動くけど、
強さを出す言葉としてはかなり使いやすいです。
例文
- 「今日、しんけんあちぃ!」
- 「こん唐揚げ、しんけんうまい!」
- 「人がしんけんに話しよんのに」
地域・世代感
- 臼杵
- 大分市
- 別府
など、かなり広い範囲で出ていました。
印象
「とても」にもなるし、「本気で」にもなる。
大分弁の中ではかなり代表格です。
2)「そうとう」:方言というより日常の強調語として強い
コメントで意外と多かったのが そうとう。
「そうとう」は標準語にもある言葉ですが、大分でも『かなり/とても』の意味で日常的に使われる強調表現です。
使い方
- かなり
- 相当
- とても
例文
- 「今日、そうとうあちぃ」
- 「こん唐揚げ、そうとううめぇ」
- 「あん人、そうとう話なげぇ」
地域・世代感
- 大分市
- 臼杵周辺
などで自然に出ていました。
印象
標準語にもある語やけど、大分の日常会話の中でもかなり普通に使われる。
純方言というより、大分弁の中に自然に混ざっている“強調語” と見る方がよさそうです。
3)「もな」:県北・別府あたりで出る“かなり/すごく”
もな も、大分らしい言い方としてよく出ます。
使い方
- かなり
- すごく
- とても
例文
- 「もな、よく言う」
- 「あぁ〜もなよだきぃ〜」
- 「あん人、もーな話長げぇ」
- 「今日、もーな暑ちぃ」
地域・世代感
- 県北
- 別府
- 国東〜杵築周辺
印象
日常の中でぽんと出る、かなり大分っぽい強調語。
「しんけん」より少しくだけた会話感があります。
4)「えれえ」:強い・大きい・長い、幅広く使える
えれえ も、強さを出す語としてかなり印象的です。
使い方
- とても
- ものすごく
- ひどく
- えらく
例文
- 「えれえあちぃ」
- 「あん人ん話はえれぇなげぇ」
- 「しんけん、えれえの両方使う」
地域・世代感
- 佐伯
- 日田周辺
- 年配層でも使用感あり
印象
標準語の「えらい」に近いけど、
大分ではもっと自然に強調語として残っている印象です。
「とても長い」「すごく暑い」みたいな言い方に向いています。
5)「ばされえ/ばさろぉ」:かなり地域色の強い“ものすごく”
ばされえ は、今回の中でもかなり地域性の強そうな語です。
使い方
- とても
- ものすごく
- かなり
例文
注意したい点
- 「こん唐揚げ、ばさろぉ美味ぇ」
コメントでは、
「ばされぇ」は “さつ・大ざっぱ” 寄りで使うという声もありました。
つまり、単純な「とても」だけではなく、
文脈によって別の意味に寄る場合がありそうです。
印象
強調語として使う地域もあるけど、
意味が一枚ではない語。
記事では地域色の強い言い方として扱うのが安全です。
6)「とうてん」:”とても”というより「とてもじゃない」寄り
とうてん は、今回かなり注意が必要な語でした。
使い方
- とても
- ものすごく
- ただし「とてもじゃない」「到底」寄りに感じる人もいる
例文
- 「あの焼き餅、とぉーてん美味しいけん」
印象
この語は、使う人によって
- 強い肯定の強調
- 「とてもじゃない」寄りの大きな程度
のどちらかに寄る感じがあります。
「標準語の“とても”」と一対一で置き換えるには、少し慎重に見た方がよさそうです。
7)「ざーね」:日田では“とても”より「そんなに/それほど」寄り
今回いちばん意味が整理されたのが ざーね です。
使い方
- そんなに
- それほど
- ずいぶん
- 過剰に
- あまり良い意味では使わないことが多い
例文
- 「アタシんゆうこたざーね聞いちょらんやん」
- 「ざーねこしらえちから」
(=えらく着飾っている、でも意味合いとしては“場違いに着飾りすぎ”寄り)
地域感
- 日田で使う、という実感あり
- 「日田だけで使うみたい」という声もあり
印象
最初は「ざーね=すごく/とても」と見えそうやけど、
実際のコメントを追うと、日田では“そんなに・それほど・過剰に”寄りで、しかも否定的なニュアンスを帯びやすいようです。
つまり「大分弁で“とても”」の代表として並べるには危うくて、
むしろ強さを表すが、否定寄りに傾く語として扱うのが自然です。
8)「いちべえ」:佐伯で気になる言い方
いちべえ は、今回のコメントでは意味の詳細まではあまり出なかったけど、
佐伯に来て「?」と思った言葉として挙がっていました。
使い方
- 強調語の一つとして使われる可能性あり
印象
今回の時点では、語として存在感はあるけど、用例がまだ少ない段階です。
地域語として残っている言い方の一つとして見るのが自然そうです。
9)「ちょ〜」も世代差のある強調語
今回のコメントでは、
「ちょ〜なげぇ」 のような言い方も出てきました。
*方言というより、世代語・若者語
使い方
- とても
- すごく
- めっちゃ
例文
- 「ちょ〜なげぇ」
地域・世代感
- 大分市
- 中学・高校生頃から使い始めた感じがする、という声あり
印象
これは方言というより、
世代語・若者語が大分の会話に混ざった形として見る方がよさそうです。
昔からある強調語とは別の層として面白いです。
10)同じ「とても」でも、何にかかるかで言い方が変わる
今回のコメントを見ていると、
同じ「とても」でも、何を強調するかで言い方が少し変わる感じがあります。
たとえば、
- 暑い
→ しんけんあちぃ、えれえあちぃ、もーな暑ちぃ、そうとうあちぃ - うまい
→ しんけんうまい、そうとううめぇ、ばさろぉ美味ぇ - 話が長い
→ えれぇなげぇ、もーな話長げぇ、そうとう話なげぇ、ちょ〜なげぇ
みたいに、
- しんけん はかなり万能
- そうとう は幅広く当てはめやすい
- もな は会話の中で自然に出やすい
- えれえ は“長い・大きい・強い”に合いやすい
- ばされえ はかなり強いが地域差あり
という傾向が少し見えます。
11)「大分弁で“とても”」も一くくりにはできん
今回かなり見えてきたのは、
「大分弁で“とても”って何て言う?」と聞いても、
答えが一つにはならんということでした。
- 臼杵では「しんけん」
- 佐伯では「えれえ」
- 県北では「もな」
- 大分市では「しんけん」「そうとう」
- 日田では「えれえ」「ばさろぉ」
- 日田の「ざーね」は“とても”より“そんなに・それほど”寄り
みたいに、地域や世代でかなり違う。
しかも「とうてん」「ざーね」「しゃっち」みたいに、
そもそも質問した側の想定していた「とても」と、
実際の意味が少しズレる語もある。
そこが面白いところです。
まとめ
今回集まった「大分弁で“とても”」系の言い方は、
- しんけん
- そうとう
- もな
- えれえ
- ばされえ/ばさろぉ
- とうてん
- ざーねー
- いちべえ
- ちょ〜
などでした。
ただし、全部がそのまま標準語の「とても」と一対一で対応するわけではなく、
- しんけん は広く使いやすい
- そうとう は日常語として強い
- もな は県北寄り
- えれえ は強い強調に向く
- ばされえ は地域差が大きい
- とうてん/ざーねー は意味がずれやすい
というふうに、それぞれ守備範囲が違います。
だから「大分弁で“とても”はこれ」と一つに決めるより、
大分弁には“強さ”を表す言い方がいくつもあって、地域や年代で混ざり合っている
と見る方が自然やね。
※この記事は、SNSで集まった「大分弁で『とても』をどう言うか」に関する声をもとに整理したものです。
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