大分弁の「汚い」って、実は一つじゃないんよね。
「きっさねぇ」「うたちぃ」「いびしい」「びったれ」…。
聞いたことある言葉もあれば、「それは初耳!」というのもある。
しかも面白いのが、どれも単純に「汚い」ではなくて、
- 不潔で汚い
- 気持ち悪い
- だらしない
- 怠け者っぽい
- 人として感じが悪い
みたいに、微妙に指す“汚さ”が違うこと。
今回は、大分でよく出てきた「汚い」系の言葉を、意味の違いと地域差が分かるように整理してみます。
1.いちばん広く通じそうなのは「きっさねぇ/きさねぇ/きたねぇ」

まず、いちばん共通語に近くて、県内でも広く使われていそうなのがこの系統。
- きたねぇ
- きさねぇ
- きっさねぇ
大分市、臼杵市、津久見、県南寄りでも出ていて、
“物理的に汚い”を言う時の基本形っぽい印象です。
例文のイメージ
- 「手ぇ洗わんで食うな、きたねぇ!」
- 「その靴、きっさねぇ なぁ」
- 「きさぁ〜ねー」は、さらに強い汚さを言う感じ
つまりこれは、一番ストレートな「汚い」。
まず迷ったらこの系統、と言えそうです。
2.「うたちぃ」:不潔・触りたくない感じの汚さ

「うたちぃ」は、大分弁の“汚い”の中でもかなり特徴的な言葉。
特に県北寄りでよく出ていて、宇佐などでは今でも使う人がいるようです。
ただし、この言葉は単なる「汚れている」よりも、
- 不潔
- 触りたくない
- 嫌な感じの汚さ
が強い印象。
例文のイメージ
- 「そげん手ぇで触るな、うたちぃ」
- 「うたちぃ < うぅたちぃ < うたちげねぇ」
- 「もなうたちぃ」は最上級っぽく使う人もいる
「汚い」の中でも、不潔さや嫌悪感が強い時にハマる言葉やね。
*豊後高田市でも普通に“汚い”=うたちぃという声がありました。
一方で、「うたちぃはうっとうしい寄り」と感じる人もいて、地域外では意味がずれることもありそうです。
つまり、県北では比較的ストレートに“汚い”で通るけど、他地域では別の意味に寄る場合があると見ておくのが自然です。
3.「いびしい」:汚いというより“気持ち悪い”

これはかなり重要。
コメントでも多かったけど、「いびしい」は 汚いそのものではなく、気持ち悪い・グロい の意味で使う人が多いです。
たとえば、
- 動物の死骸
- グロテスクなもの
- 見た目がぞわっとするもの
に対して出やすい。
例文のイメージ
- 「あれは いびしい わ…」
- 「いびしい」は、汚いというより気色悪い
- 宇佐の一部では「怖い」で使うという声もあり
つまり「いびしい」は、
不潔というより“見て嫌な感じ”の汚さを言う語として見るのが自然です。
*大分市でも「いびしい」を“ただ汚いだけでなく、見て気持ち悪い感じ”で使っていたという声が入りました。
また、臼杵の人からも「いびしい」は日出の方で聞いた気がするという記憶が出ていて、
この言葉は県北だけの限定語ではなく、中部〜東部でも“特殊な汚さ”を表す語として残っていた可能性があります。
4.「びったれ」:汚いより“だらしない人”

「びったれ」は、一番勘違いされやすそうな言葉かもしれません。
一見「汚い」に見えるけど、実際には
- だらしない
- 怠け者
- 不潔な人
- 身なりを整えん人
みたいに、人に向ける言葉として使われることが多いです。
例文のイメージ
- 「顔も洗わんで来るとか、びったれ やなぁ」
- 「風呂入りよえ、びったれ やなぁ」
- 日田では「びったれ=怠け者」という声もあり
つまり「びったれ」は、
物そのものの汚さより、“人としてだらしない・不潔”寄りです。
5.日田で出てきた「べべしい」「うらんしい」「ぐらめしい」
日田周辺は、汚い系の言葉も少し独立感があります。
べべしい
小さい子どもが汚した時などに使う、
少し幼児語っぽいやわらかい言い方として残っている印象。
- 「べべちぃね〜」みたいな使い方も
うらんしい
日田では「汚い」系として出てきたけど、
これも地域外だとあまり知られていない言葉。
かなり局地的な語感があります。
ぐらめしい
「うらんしい」よりさらに強い感じで使う、という証言も。
汚い・ひどい・見苦しい、の強化形のような位置かもしれません。
6.「ばばしい」「ばばしぃ」:大分の“古い汚さ”感
これも面白い語で、日田や北部寄りで出ていました。
「べべしい」と似ているけど、こちらはもう少し広く
- 汚い
- ひどい
- 状態が悪い
みたいな方向にも使われるようです。
宮崎北部の人からは、「はばしい」は状態がひどい・強い意味で使うという話もありました。
つまりこの系統は、大分だけでなく周辺地域までつながる可能性があります。
7)地域差はどう見える?

ざっくり分けると、こんな印象でした。
県北(宇佐・中津・日出・杵築・別府あたり)
- うたちぃ
- いびしい
- びったれ
- うたちげねぇ
このあたりが比較的強い。
「うたちぃ」と「いびしい」の使い分けが残っている感じ。
大分市周辺
- きたねぇ
- きさねぇ
- きっさねぇ
がかなり強い。
「いびしい」は知っていても特殊用法、という人が多め。
県南(津久見・臼杵・佐伯)
- 津久見は「きっさねぇ」「きったねぇ」が強め
- 臼杵・佐伯は「うたちぃ」や「いびしい」が弱い/初耳の人もいる
- ただし家庭差はある
日田
- べべしい
- うらんしい
- ぐらめしい
- びったれ(怠け者)
など、少し独自色が強い。
8)「汚い」って一語じゃないのが大分っぽい

今回いちばん面白かったのは、
「汚い」を一語で済ませずに、何がどう嫌かで言葉が変わること。
たとえば、
- ただ汚れている → きたねぇ/きさねぇ
- 不潔で嫌だ → うたちぃ
- 見て気持ち悪い → いびしい
- 人がだらしない → びったれ
- 日田の局地語で言う → べべしい/うらんしい/ぐらめしい
こんなふうに、
“汚さの種類”ごとに語彙が分かれるのが、大分弁の面白さやね。
まとめ
大分の「汚い」系の言葉は、ざっくり言うとこう。
- きっさねぇ/きさねぇ/きたねぇ
→ もっとも広く通じる、ストレートな「汚い」 - うたちぃ
→ 不潔、触りたくない、嫌悪感のある汚さ - いびしい
→ 汚いというより、気持ち悪い・グロい - びったれ
→ 汚い人、だらしない人、怠け者っぽい人 - べべしい/うらんしい/ぐらめしい
→ 日田などで出る局地色の強い言い方
「汚い」と一言で言っても、その中身を細かく分けているのが大分弁の面白さ。
しかも県内でかなり地域差があるので、“大分弁の汚い”は一枚岩じゃないというのが、今回いちばん見えてきたことかもしれません。
※この記事は、SNSで集まった「大分弁の『汚い』の言い方」の用例や地域差の声をもとに整理したものです。
▶︎ 大分弁の一覧はこちら


